アンコールワット
---- 世界紀行 (アンコールワット) ----
漆黒の闇に浮かぶ塔頭、飛び交う怪光
アンコールワットは夜明け前
千年の沈黙を護って、水面に威容を映す
神々が棲むという城塞は、塵俗を寄せつけない
悪鬼との争いに、奮戦した前門は草生え
陽光を浴びた獅子は、遥かに王宮を臨む
魑魅魍魎から解き放たれて、王宮は静かに全容を現した
回廊には首を切られた仏像、遠くに首をつけた橙装の僧
世界の頂き、須弥山はかくの如し
妖艶たる女官は数あまた、王を護って久しい
堅固なる城塞からは、下界はるかに蟻の群れ
彼岸の対岸は此岸、涼風来たりて平和あり